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2021.10.17 シンポジウムvol.2(1)『全国こども福祉センター』の活動

2021.10.19

イベント

子どもアドボカシー

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2021年10月17日のシンポジウム第2回がオンラインで行われた。テーマは「子ども・若者と共に歩む社会へ~子ども・若者達と共にアフターケアを考えよう~」。 名古屋を拠点にアウトリーチ活動を行う『NPO法人全国こども福祉センター』と、アドボカシーを推進する『一般社団法人こどもの声からはじめよう』の2つの団体に、子どもや若者と「一緒に」考える、活動することについて、それぞれの視点や実践を報告してもらった。 まずは、NPO法人全国こども福祉センターから話題提供として、理事長の荒井和樹さん、活動メンバーのうららさん、光さん、マオさんがお話しした。

●支援を目的とせず、「出会い」と「対話」を重視する ――理事長・荒井和樹さんより

(荒井)僕たちは、子ども・若者で声がけを行って、若者と直接つながる活動を続けてきました。研究者の方々からは、フィールドワーク、社会調査として認識されていたり、街角保健室のような一時避難所みたいな場所だと言われたり、繁華街に居場所を作り出す活動などと言われています。

虐待や家出など、子どもたちが抱える問題がありますが、私たちの団体では、問題のある・なしや、その違いで分けることはありません。問題を修正、矯正したり、考えを改めろというのもなくて、「関わり続けたい」思いで、毎週路上に立っています。

センターは特別な支援を提供してはいないのですが、対話と交流を大事にしてきて、仲間と話すことで少しずつお互いをケアする、回復していくというか、目標を見つけてそこからまた新しい出会いが生まれたりしています。支援することで成果を挙げる団体ではなく、「出会う」や、「対話する」に価値を置いているため、従来の自立支援の考え方とは少し異なる活動で、何でそんなことやってるんだと思う方もいると思います。でも出会った人たちと、支援について考えることを繰り返していくうちに、やっぱり我々支援する人たちや、福祉をずっとやってる人が考える支援の在り方というものを、問い直す必要が出てきた。

僕はずっと、若者と出会う中でどうしていいかわからないことがあったのだけど、だったら出会った子ども・若者と一緒に考える、その語りから考えることを活動にする。それを全国子ども福祉センターの活動内容にしていった経緯があります。

「支援を目的にしない」という出会い方が、これからの子ども家庭福祉に取り入れられたらいいなと思って実践研究をしています。一人のカリスマ的アプローチも、いろんな人が助かるかもしれないけど、自分はみんなでできる、出会った若者・子どもたちも一緒に考えて作るというところに価値を置いてやっています。それを先日『子ども・若者が創るアウトリーチ』という本にまとめました。アウトリーチって最近ブームで、その必要性も強調されますが、具体的な方法が整備されてるものがあまりなかったので、本にまとめました。

支援拒否する子どもたちとの出会い

僕は北海道出身で、これまであまり自分の生い立ちを語りませんでしたが、幼少期に難病の母と死別して、障害を抱える父のもとで育っています。父が家に帰ってきては、仕事や学校で差別されてきたとか、母を、パートナーを亡くした悲嘆・悲しみや絶望をずっと間近で見てきたので、人がどういうことで苦しみ、悩むのか、小さい頃から意識してきたのだと思います。

それで、児童福祉施設職員として施設で生活する子どもたちと関わっていたのですが、公的支援で運営され、衣食住、教育、医療等が保障され、たくさんの寄付や支援が集まってくるけれど、子どもたちがその支援を拒否したり、ありがたいと思わなかったり、行き違いが生じていることが心に残っています。プライベートやSNSを覗いたり、繁華街を歩けば、犯罪に誘われたり、勧誘行為を受ける子ども・若者と出会います。医療・福祉からこぼれてしまったり、それを選ばない子どもたちと出会う中で、たくさんの人の思いがすれ違っていることに気付きました。公的な機関はハードルが高いと感じる若者も少なくないです。

そんな中で、「支援拒否をするのはなぜだろう」という考えがすごくあって、もう少し福祉が積極的に動けないかと考えるようになりました。

つなげることも大事だけど、それ以外の新しい選択肢を自分たちで作ることができないか。貯金もないし、北海道から出てきて仲間もいなかったけど、とりあえず何もない中でやってみたのが、全国こども福祉センターです。そこで協力してくれたのが、今日登壇してくれている仲間のメンバーや、卒業していったメンバーです。

児童相談所や相談窓口があっても相談しようと思えなかったという活動メンバーもいます。その言葉を事実として受けとめて、何ができるかを考えてきました。街に出向き、声をかけ、現状を知る。人々の語りを聴くことから始めました。支援を経験してきた若者が支援を拒否している。その事例が多くて、彼らの語り、その悲嘆、絶望や悲しみ、怒りを受けとめる中で、保護や救済以外の児童福祉の活動が必要と考えました。

そこで今、協力してくれてる若者が、全国こども福祉センターの活動メンバーです。活動メンバーにバトンタッチします。

●求めていたのは居場所 ――うららさんより

(うらら)16歳の高校1年生、いがらしうららです。センターの活動には中学2年生から参加していて、今年で3年目になります。

センターが名古屋駅西口で声かけを行っている時に、歩いていて声をかけられたのが活動のきっかけです。本当に駅前で着ぐるみを着て、こんにちは~! どうも~!みたいにやってるんですね。そんな人に急に「何してるの~?」って言われて、「うわ、こいつらやべーやつだ」と思ったんですけど(笑)、話を聞いてみたら、着ぐるみを着てるのにも、場所にも理由があって、活動内容がすごくしっかりしてた。声かけられた当時、学校でのいじめだったり家庭環境だったりで、私も家や学校に居場所を感じてなくて。でもここのセンターには同じ境遇の子たちがたくさんいて、そういう子に声をかけていると聞いて、自分も何か力になれたらいいなと思って参加するようになりました。

声かけてもらう前は、本当にどこにも居場所がなくて、自分の思いを言える場所もなかった。先生に言っても親に話が行くし、電話相談にかけてもどうせ大人が話聞いて、最終的には絶対支援に行く……みたいな。私は別に支援を求めてるわけじゃなくて、居場所がほしいとか、話を聞いてほしいだけだった。

でも、居場所がないのは自分だけと思ってたけど、活動を通して、居場所がないことに悩んでいる子や、話を聞いてほしいと思っている同世代の中高生とかたくさんいることがわかった。そういう思いを私自身も経験してきて、辛さもわかるし、そういう子たちの、ちょっと気が休まる場所とか、話を聞いてあげられる人になれたらいいなという思いがあって活動しています。

センターではいま私が最年少なんですけど、学校だと同い年の子と先生ぐらいしか関わらないし、家にいても家族とだけで、同じような関係の人しか関わることがない。でも、センターはいろんな年代の方と交流できるし、街頭での声がけ活動でもいろんな人が歩いている。思いも境遇もさまざまな方とお話できるので、このセンターはすごくいいところだな。私の居場所になってて、第2の家って感じがする。とても安心できる場所です。

●こういう団体や居場所が増えてほしい ――光さん

(光)光といいます。ふだんは県内の病院で看護師として働いていて、時々メンバーとして活動に参加しています。26歳、愛知県在住で、昨年、就職しました。趣味は、学生の頃からのサイクリングや動画鑑賞、デジカメや一眼レフで写真撮影をしてSNSに上げたりしています。

団体との出会いは、大学1年生の4月に花火を見に行った時に、当時の理事や学生メンバーの方と出会ったんですけど、うららが言ったように着ぐるみ着たメンバーだったので、「すごい……何だこの人たち……」って、最初は話しかけるのを躊躇いました。何をしてるのかわからないし距離を置いて関わらないようにしてたんですけど、見ているうちに興味が生まれて。

自分がもともと看護師を目指したのが、高齢者の虐待は問題になるのに、子どもたちはどれだけいじめられていても、学校側が問題にしなかったり、世間で明るみならない状況がすごい嫌で、看護師になったらいじめとかで苦しんでいる子どもたちを助けたいと思ったのがきっかけでした。そんな時にこの団体に出会って、話を聞いて活動内容に共感して、2年ほどボランティアで参加していました。中高生のいじめとかに対する社会の関心の低さを変えていきたいという思いと、こういう団体や居場所が増えて、子どもたちがいじめられてもすぐに「助けて」と言える場所を提供したい。「こういう場所があるんだよ」と知ってもらいたくて参加しています。

ただ、2年活動した後、5年間はまったく活動から遠ざかっていました。看護学生の時に1年留年したんですけど、自分、親兄弟全員が医療従事者の家系で、「医療関係の家系なのに、何で留年してるんだ」って批判がすごかったんですよね。その苦痛に耐えられなくて、その時に人と関わることがすごい嫌になってしまって。そんな時、この団体は自分の支えでした。とは言え荒井さんに相談できる状態でもなかったんですけど、こういう団体があるから、自分はこういう人たちを助けていきたいという、根本的なところをしっかり組み立てることができたので。今は、看護師になれて生活も落ち着いて、立ち直って、看護師として団体に恩返しという形で再び活動しています。

看護師として、活動メンバーだけでは関わることが困難なこと、例えば病院に通ったことがあるとか、リストカットや自殺未遂まで行ってしまった子となると、メンバーが重たい状態になってしまうので、そこは自分が関わっていこうと思っています。

あとは、学生メンバーのメンタル面のフォローですね。新しく来た子たちについて「最近来た子たちと関わってどんな感じ?」ってメンバーの愚痴を聞いたり、日頃のちょっとしたストレスを自分にぶつけられるようにやっています。

●チャット質問:『活動仲間との交流で得たものは何ですか?』

(うらら)活動を始めた中学2年生ぐらいの時は、本当に人見知りが激しくて、自己紹介できないレベルでした。「全然知らない人じゃん。うわぁ、うわぁ……」みたいな(笑)。話したいことがあっても言葉が出てこなかったけど、いろんな年代、いろんな考えの方と交流するようになって、前よりは少し自分の思いを言葉にしたり、初対面の方とも話せるようになったかなと思います。

得たものでいうと、仲間が増えた、友だちが増えた……何だろう。(チャット「チャンネルが増えた?」)。あ、そうです。ずっと「1個」みたいな、「こういう考え1個」な感じだったのが、視野が広がったというか、いろんなとこに行けるようになったというか。駄目だ、語彙力が本当になくて、申し訳ないです……。

チャット質問:『荒井さんの第一印象教えてください』

(うらら)私が会った時は、髪は茶色で、チャラくて、確かスーツを着てました。名古屋駅の人通りが多いところで、シャツの袖を手の甲まで伸ばして、ガチャピンの着ぐるみを着て「やあ!」ってやってて(笑)。「あっ、この方はすごくメンタルが強い方なんだな」という印象を受けました (笑)。すごい行動力がある方だなって思いましたね。

最初はちょっと怪しいと思いました。でも、全然怪しくない、めちゃめちゃいい人でした(笑)。すごく優しくて、面白くて、とても尊敬しています。私もこんな方になれたらいいなと思っています。

お願い~活動を支えてくれる大人募集!

(うらら)最近コロナの影響でメンバーが減っていて、もちろん大学生や高校生とかの活動メンバーもほしいんですけど、私が活動を始めた頃に比べると、支えてくれる大人の方が本当に少ない状態で。活動を支えてくれる大人の方が増えたらいいなあと思っていて、みなさまよかったら遊びに来てください。

(光)チャットの質問で、「どのような大人が良いですか?」ということなんですけど、今、大学生や社会人なりたてのメンバーがごそっと抜けちゃった状況です。なので、団体のことをしっかり知って、今後のことも考えてくれる、団体の悪いところは改善するよう助言してくれたり、メンバーの良いところは伸ばしてくれるような方が増えてくれたらと自分は思っています。人数は、コロナの影響や、保護者に参加させてもらえない方もいるので、少ない時だと2~3人、多くて10人くらいが現状です。

(荒井)マオちゃん、何か一言ない? 彼女もずっと裏方で団体を支えてきてくれた仲間です。

(マオ)体験しないとわからない人が多いと思うので、少しでも興味を持っていただけたら1回参加してほしいと思います。皆さんが名古屋に来れるんだったらぜひ、お願いします。

(安井)ユースの皆さんや荒井さんの掛け合いからも普段の活動の雰囲気が伝わったんじゃないかと思います。僕もオンラインで皆さんの場に時々お邪魔させていただいていて、いろんな子ども・若者がごちゃっとしていて、でもなんか居心地よくてという、不思議な空間だなあといつも感じています。ありがとうございました。

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